千人計画の開始(2008年)
千人計画(正式には「海外ハイレベル人材招致計画:海外高层次人才引进计划」)は、海外で活躍する優秀な人材を2千人程度招聘し、重要な技術を開発し、ハイテクを研究し、イノベーティブな創業を推進することをサポートする政策であり、2008年に開始された。
策定経緯
2008年、中国共産党中央員会組織部は、1994年に開始された百人計画などの経験を踏まえ、千人計画(正式には「海外ハイレベル人材招致計画:海外高层次人才引进计划」)の実施に着手した。
国内の大学、研究機関、国営企業、金融機関、ハイテク産業開発区などに、海外で活躍する優秀な人材を2千人程度招聘し、重要な技術を開発し、ハイテクを研究し、イノベーティブな創業を推進することをサポートする政策であり、2千人程度の招聘者を目標としたため「千人計画」と呼ばれることとなった。
千人計画を発案した中国共産党中央委員会組織部は、中央省庁、地方政府、国有企業、金融機構、大学などの幹部の任命を司る人事の最高司令塔で、「中央組織部」と略称される。中央組織部が前面に出たこの計画の開始は、海外人材誘致政策を党全体で本格化させたことを示すと同時に、海外人材を中国全体の発展のためにより重要なポストに就かせる決意も表している。
中国科学院による百人計画などの従来の科学技術人材政策と違い、千人計画は研究・教育分野の人材だけではなく、産業界や金融界の国有企業にかかわるトップ人材もあわせて招致することであった。共産党が前面に出た背景には、かつて2002年に国務院が海外から国有企業のトップ人材を公募したが、2008年までに543の重要ポストに29人の海外人材しか招致できなかったことがある。
千人計画の具体的な措置
千人計画では、人材誘致について環境整備が最も重要であるとされ、経費、報酬、待遇だけではなく、海外人材の生活、研究、就業にかかわる環境整備が進められ、保険税収、出入国管理、配偶者就業、子女入学、住宅手当、受入機関の体制、地方政府のサポートなどの面から手厚く最適な受入環境を整備した。
千人計画では国籍を問わず、55歳以下で海外で博士号を取得している者が対象とされた。外国籍でも応募できるのは中国の人材招致政策として初めてである。外国籍の人材を重要視し、短期間でも中国で研究活動してほしく、国際的な人材ネットワークの強化による研究レベルの向上を狙っていることを表している。
千人計画の種類は、長期プログラム(中国での年間活動期間9か月以上)、短期プログラム(中国年間活動2か月以上)、創業人材プログラム(海外起業経験と自前技術を有する人材)、外国専門家プログラム、青年千人計画プログラム(40歳以下)の5つである。
採択者のポストとして、中国の重点大学、研究機関、金融機関などの上級管理職と、国家重点実験室、863計画、973計画などのプロジェクト責任者などが用意される。この他にも、外国籍の者には永住権が、中国籍の者には任意の都市戸籍が与えられる。
千人計画の成果
千人計画の採択者は、2018年までに約8千人となり、当初計画の2千人を大幅に超えた。
受入れ機関を見ると、清華大学が1位、浙江大学が2位となっている。千人計画の成果としては、採択者本人の貢献だけではなく、その採択者の人的ネットワークおよび成功経験による波及効果が重要である。
なおその後、この千人計画は自国の技術盗取を促進するとの米国などからの非難を受け、中国政府は対象を外国に滞在する若手中国人研究者に絞った制度に衣替えした。
参考資料
・SPC HP 「千人計画」
(この項目