中国科学院

 中国科学院は国務院に直属している機関で、中国最大の研究開発実施機関である。また、科学関連で重要な業績を挙げた中国の科学者は、中国の最も優秀な科学者、学術権威とされる中国科学院の院士に選任される。さらに、中国科学院は優れた大学を傘下に有している。
 中国科学院は1949年の新中国建国と同時に設置された機関であり、当初は多数の科学者を擁して中国の科学技術政策を企画し、その重要な部分を自らが実施していた。しかし、その後現在の科学技術部の前身である国家科学技術委員会などが設置されたため、中国科学院は研究開発の実施機関として位置づけられることになった。

 ただ、その後も中国科学院は、結果として中国の科学技術政策に大きな影響を及ぼし続けている。一つは、多くの科学者・技術者を擁しているため、中国科学院が実施する施策が他の研究機関の模範となる場合があることであり、1990年代に実施された海外人材の招聘政策である「百人計画」がその代表例である。百人計画は中国科学院の内部的な施策として打ち出されたが、この施策が成功したことにより政府が 海外人材の招聘政策をより拡充していった。
 二つ目は、院士制度を通じた科学技術政策の提案である。院士は、科学技術の世界で功なり名を遂げた人々であり、これらの人々が中国の科学技術政策について大所高所から意見を表明し、それが中国政府の政策に反映することがある。代表的な例としては、1986年3月に4名の中国科学院学部委員(現在の院士)によってなされたハイテク技術開発への提言であり、この提言を受けて鄧小平の指示により、「国家ハイテク研究発展計画(863計画)」がスタートしている。
 このように、現在でも中国科学院は、科学技術政策立案の面で大きな役割を果たしている。

 なお、中国科学院全般については、このHP内の別のコーナーを参照されたい。

・中国科学院HP https://www.cas.cn/

(この項目 了)