はじめに

 瑞金医院 (Ruijin Hospital) 、上海交通大学医学院の臨床医院である。フランスのキリスト教の宣教師により1907年に設立された広慈医院が前身で、優れた臨床評価と学術評価を有している。

 瑞金医院については、HPのアドレスはあるが国内向けで日本からは接続できないため、詳しい公式の情報はない。以下は、百度HPやウィキペディアの情報を元に作成した。

瑞金医院の写真
瑞金医院  京客网HPより引用

1. 名称

○中国語表記:上海交通大学医学院附属瑞金医院  瑞金医院
○日本語表記:上海交通大学医学院附属瑞金医院 
○英語表記:Ruijin Hospital, Shanghai Jiaotong University School Of Medicine

2. 所管

 瑞金医院の所管は、中国の主要大学の一つである上海交通大学医学院である。
 上海交通大学は元々医学院(日本の医学部)は有していなかったが、2005年に上海第二医科大学と合併して上海交通大学医学院を設立した。 

3. メインの所在地

 瑞金医院の本院は、上海市の中心部である黄浦区の瑞金二路197号に位置する。

4. 沿革

(1)広慈医院が母体

 瑞金医院の母体は、現在の本院がある瑞金二路にフランス人神父の主導により、1907年に開設された広慈医院(广慈医院、St. Marie Hospital)である。

 これより前の1903年に、上海交通大学医学院の前身の一つである震旦大学が、フランスのキリスト教団体により設立された。震旦大学は、設立当初には医科を有していなかったが、上記の広慈医院に臨床医院として協力を仰ぐことを前提に、1912年に医学院(医学部)を設立した。

(2)瑞金医院へ

 中華人民共和国建国後の1951年に、上海市人民政府が広慈医院を接収した。翌1952年に院系調整の結果として上海第二医学院が設立され、広慈医院は同医学院の臨床医院となった。

 1967年に東方紅医院と改名し、さらに1972年に瑞金医院と改名した。瑞金は医院の前を通る瑞金二路に由来している。

 瑞金医院の本体である上海第二医学院は、1985年に上海第二医科大学に改名した。さらに2005年には、上海第二医科大学は上海交通大学と合併し、上海交通大学医学院となった。この間、瑞金医院はこれら高等医学教育機関の臨床医院の地位にあり、現在に至っている。 

5. 分院の有無

 瑞金医院の本院は、黄浦区瑞金二路にあるが、本院以外に次の2つの分院を有している。
○北院:上海市嘉定区希望路999号
○盧湾分院:上海市黄浦区重慶南路149号

6. 規模など

(1)規模

 瑞金医院の規模について、ウィキペディアや百度のHPの情報によれば、次の通りである。
○病床数:承認病床数は1,893床で、実際に使用されている病床数は2,139床である。
○スタッフ数:約4,402名、そのうち医療専門技術者は約3,841名である。

(註)病床数を日本と比較すると、2021年7月時点で日本最大のベッド数を有するのは愛知県豊明市にある藤田医科大学病院の1,435床であり、東京では東京大学附属病院が1,226床を有し日本第3位である。
 東京大学付属病院の職員数を見ると、全体で4,273人(2023年4月現在、短時間有期雇用職員等を含む)となっている。

(2)科学研究施設

 瑞金医院は、次の国家的な施設を有している。
○代謝性疾病国家臨床医学研究中心(代谢性疾病国家临床医学研究中心)

(3)評価

 復旦大学の医院管理研究所による中国医院ランキング(2022年)での評価は次の通りである。ランキング全体は、こちらを参照されたい。
○総合順位:満点が100点のところ、49.127点で全国4位  1位は北京協和医院で95.301点   
○医療評価:満点が80点のところ、36.432点で全国4位  1位は北京協和医院で80点
○学術評価:満点が20点のところ、12.695点で全国11位  1位は四川大学華西医院で20点

7. 特記事項

(1)王振義(王振义)

 瑞金医院の著名な関係者として真っ先に上げなければならないのは、王振義(王振义、Zhenyi Wang)であろう。

 王振義は、1924年に上海の裕福な家庭に生まれ、1942年に現在の上海交通大学医学院の前進の一つである震旦大学医学院に入学した。1948年に同大学を卒業して医師となり、同大学の臨床医院である広慈医院(現在の瑞金医院)に勤務した。
 王振義の専門は、病理生理学、特に血液学である。彼の研究成果は急性前骨髄球性白血病(APML)患者の生存期間の改善につながっている。この成果により、1995年に中国工程院院士に当選し、さらには2011年に国家最高科学技術賞(日本の文化勲章に相当)を受賞、2020年には未来科学大賞生命科学賞を受賞している。

師昌緒の-国家最高科学技術賞受賞写真
王振義(左)の国家最高科学技術賞受賞 百度HPより引用

(2)陳竺(陈竺)

 陳竺(陈竺、ZhuChen)も瑞金医院関係者として著名である。

 陳竺は1953年に江蘇省に生まれ、1981年に上海第二医学院(現在の上海交通大学医学院)で修士号を取得の後フランスに留学し、1989年パリ第7大学で博士号を取得した。上海第二医学院での恩師は、上記の王振義であった。
 その後1990年に上海に帰国し、瑞金医院の医師となり、2000年10月から中国科学院副院長を務めていた。専門は血液学、分子生物学である。

 日本との関係も深く、上記の写真は東京大学と中国科学院の協力プロジェクト発足式のものである。

陳竺博士と筆者の写真
陳竺博士(右)と筆者

 陳竺は2013年に衛生部長を退任したのち、中国共産党以外で認められている党派の一つである農工民主党主席として、中国の国会に当たる全国人民代表大会の常務委員会で14名いる副委員長を務めている。
 また、2015年からは中国の赤十字組織である「中国紅十字会」の会長でもある。

参考資料

・上海交通大学医学院HP https://www.shsmu.edu.cn/index.htm