遠景計画(科学技術発展遠景計画綱要(1956年~1967年))の公表(1956年)

 遠景計画(正式名称:科学技術発展遠景計画綱要(1956年~1967年))は、1956年に公表された中国政府初の中期的な計画である。

遠景計画の策定経緯

 建国後、中国ではソ連の計画経済に倣い、1953年から「第一次五か年計画:第一个五年计划(1953年~1957年)」を開始し、農業や産業システムの構築を目指した。これにより、緩やかに国家経済が回復し、社会主義的工業化が進行していった。

 1956年1月、中国共産党中央により知識人に関する会議が開催され、社会主義的工業化を加速するため科学技術に関する新たな中期計画の策定を目指すこととなった。同年3月、国務院は科学計画委員会を設置し、数百人の専門家や学者を動員して、最初の中長期的科学技術計画の策定に着手した。
 同年12月、中国共産党中央委員会と国務院が「科学技術発展遠景計画綱要:科学技术发展远景规划纲要(1956年~1967年)(略称:遠景計画)」を公表した。

遠景計画の表紙
遠景計画の表紙

遠景計画の内容

 遠景計画は本文と4つの参考資料によって構成され、本文は序言、1956年から1967年の重要科学技術の任務、任務の重点部分、基礎科学の発展方向、科学研究活動の体制、科学研究機関の設置、科学技術幹部の確保と育成、国際協力から構成されている。

 より具体的には、13の分野から57の重要な科学技術の任務、616の中心的な課題を取り上げ、総合的に12の重点任務を挙げている。また、中国科学院、産業部門、大学などの高等教育機関の3つの間の業務分担と協力の原則を定め、人材確保と育成方針を定めている。さらに、科学研究機関の設置について一般的な原則を定め、プロジェクト、人材、基地、体制を統括する計画を定めた。

 13の分野とは、ⅰ)自然条件と資源、ⅱ)鉱業と冶金、ⅲ)燃料と電力、ⅳ)機械製造、ⅴ)化学産業、ⅵ)土木建設、ⅶ)輸送と通信、ⅷ)新技術、ⅸ)国防、ⅹ)農業、ⅺ)林業と畜産、ⅻ)医学と健康、ⅹⅲ)機器の測定と規格であった。
 12の重要なプロジェクトには、原子力の平和的利用、ラジオエレクトロニクスの新しい技術、ジェット技術、生産プロセスの自動化、精密機器などが含まれている。
 さらに基礎科学分野の重要性を強調し、数学、力学、天文学、物理学、化学、生物学、地質学、地理学などの8つの分野が挙げられた。

 遠景計画の策定と実施は、中国の科学技術の発展に対して重要な役割を果たしただけではなく、科学研究機関の設置と配置、大学などの高等教育機関の学科と専門の調整、科学技術人材の育成、科学技術管理の体系と方法、科学技術の体制の形成に大きな役割を果たした。

参考資料

・百度HP  『1956~1967年科学技术发展远景规划