「社会主義市場経済体制の整備における若干の問題に関する決定」(2003年)

 社会主義市場経済体制の整備における若干の問題に関する決定(以下「社会主義市場経済体制に関する決定」と略する)は、鄧小平以来の改革解放路線を堅持し、和諧社会を建設するため改革の推進を加速するとした決定である。

社会主義市場経済体制の整備決定に至る経緯

 2002年に中国共産党総書記、2003年3月に国家主席に就任した胡錦濤は、朱鎔基首相が取り組んだ国有企業改革・金融改革・政府機構改革の三大改革に併せ、三農問題の改革を実施して「和諧社会」を目指すことを表明した。

 そして2003年10月、中国共産党中央委員会全体会議において、「社会主義市場経済体制の整備における若干の問題に関する決定:关于完善社会主义市场经济体制若干问题的决定」が公表された。
 同決定では、改革開放以来中国の経済体制が大きな進展を遂げたとしつつ、経済構造が不合理である、分配関係が不均衡である、農民の収入の伸びが遅い、資源環境の制約が大きくなった、国際競争力が強くないなどの課題を指摘し、和諧社会を建設するため改革の推進を加速しなければならないとしている。
 そして改革の項目として、国有企業の改革、農村の改革、市場秩序の規範化、財政税政と金融の改革、対外経済体制の改革、社会保障システムの完備などを挙げている。

科学技術に関する内容

 科学技術に関連して同決定では、「科学技術・教育・文化・衛生体制の改革を深化させ、国家の創新(イノベーション)能力と国民全体の資質を高める」として、具体的に次の項目を挙げている。

・科学技術資源の効率的な配置を促進し、イノベーション能力を高め、科学技術と経済社会の緊密な結合を実現する。
・企業の科学技術イノベーションへの投資を促進する。
国が推進する基礎研究、戦略的ハイテク研究、社会技術研究に従事する研究機関は、職責を明確化し、評価を厳格化し、管理制度を改革する。 
・市場向けの応用技術を開発する研究機関は、引き続き企業への転換を進める。
・高等教育と科学技術イノベーションの連携を推進する。
・社会科学と自然科学の協調発展を促進する。

 この決定は、胡錦濤政権における経済・社会政策の始まりであり、科学技術イノベーション政策の始まりでもあった。

参考資料

・中央人民政府HP 「中共中央关于完善社会主义市场经济体制若干问题的决定