国家産業技術政策(2002年)

 国家産業技術政策は、2001年のWTO加盟を受けて、科学技術の面から民間企業の支援を進める施策である。

 2001年にWTO(世界貿易機関)への加盟が実現したことを受け、翌年6月、国務院の国家経済貿易委員会、財務部、科学技術部、国家税務総局は「国家産業技術政策」を公表して、科学技術の面から民間企業の支援を進めることとした。
 この政策立案の背景として、WTOに加盟したことにより国内経済と国際経済はさらに融合し、中国の対外開放は新たな段階に入ったとの認識があった。世界において創新(イノベーション)の経済成長に対する貢献が大きくなり、先進諸国は重要な技術を駆使して国際的な市場で優位を保とうとしている。一方、中国の企業はWTOに加盟することで大きな圧力に直面しているが、国際分業に参加することによって産業技術の高度化が加速し、飛躍的な発展を実現するチャンスでもある。国内のイノベーション能力を高め、海外から先進技術を導入し、ハイテク産業化を加速し、競争力のある産業の発展に力を入れることが、国際競争に打ち勝つ重要な手段である。そこで、新たな情勢に対応した産業技術の戦略目標と重点を明確にし、イノベーション能力と産業技術を向上させ、産業構造を最適化するため、国家産業技術政策を策定したものである。

 この政策では、中国の産業分野での技術開発、技術改造、技術導入を分析し、解決すべき課題を列挙した。具体的には、農業、鉄鋼、電力などの既存の産業の技術水準が低い、ハイテク産業の規模が小さく技術基盤が弱い、イノベーション能力が弱く技術導入の消化吸収能力が足りないという点である。今回のWTO加入を契機として、ハイテク産業を選択的に発展させ、国家経済の根幹にかかわる重点技術でのイノベーション能力を高め、知的財産権を確保するとともに、ハイテク技術を駆使して伝統的な産業の改革を促進し、産業構造の最適化を目指すとしている。
 ハイテク技術の開発とその産業化を目指す分野は、情報通信、バイオテクノロジー、新材料、宇宙航空技術、新エネルギー再生エネルギー、海洋開発である。
 本政策での具体的な措置として、イノベーションを促進する市場メカニズムの改善、オープンイノベーションシステムの構築、ベンチャーキャピタルの育成、産学研協力メカニズムの構築、イノベーションを支援するための財政・税制・金融政策の強化などを挙げている。

参考資料

・科学技術部HP 『国家产业技术政策