はじめに

 邵峰(1972年~)北京生命科学研究所副所長は、自然免疫の研究で成果を挙げ、2019年に未来科学大賞の生命科学賞を受賞した。

邵峰の写真
邵峰  百度HPより引用

生い立ちと教育

 邵峰は、1972年に江蘇省の中西部に位置する淮安に生まれた。

 中国の知識人や向学心の強い若者を悩ませた文化大革命も、邵峰が4歳の時に終焉しており、ほとんど影響を受けなかった。

 邵峰は、地元の淮安中学に進学し、勉学に励んだ。中学の成績は優秀で、学校の英語クラブのリーダーだった。また、生物学にも興味を示し、赴任したばかりの先生を質問攻めにし、その先生は邵峰の問に答えるため周到な事前準備を必要とした。

北京大学に入学、米国に留学

 大学受験に際し、両親は江蘇省の自宅に近い海交通大学を勧めた。上海交通大学は中国国内の名門であり、淮安中学の成績などからして問題なく合格できると考えられた。しかし、統一試験・高考受験の直前に邵峰は、よりレベルが高いと考えられる北京大学を受験したいと思うようになった。そこで、邵峰は淮安中学の数学の先生に、北京大学を受験した場合に合格できるかどうかを聞いたところ、先生は合格の確率は51%であろうと答えた。邵峰は合格の方が1%上回っていると考え、猛勉強をすれば合格できると信じて北京大学を第一優先とした。

 邵峰は、1991年に北京大学に見事合格し、技術物理学科に入学した。邵峰は、1996年に北京大学技術物理学科を卒業し、応用化学で学士の学位を取得した。

 邵峰は、より高い学位を目指すことを考えたが、その際専門分野を化学から生物学に変更した。理由は、生物学における生命活動と健康について本質的な理解を追求することは、人間として自然であり永遠のテーマであるにもかかわらず、これまで生物分野での研究はそれほど進んでいないと考えたのである。
 そこで、北京大学を卒業した後、同じ北京にある中国科学院・生物物理研究所の研究生となり、1999年に同研究所から修士の学位を取得した。

 修士の学位を取得した邵峰は、さらなる飛躍を目指し米国に留学した。米国では、ミシガン大学の医学部に入学し、2003年に同大学からPhDを取得した。その後、2003年にカリフォルニア大学サンディエゴ校で、2004年にハーバード大学で、それぞれポスドク研究員となった。

帰国して北京生命科学研究所へ

 邵峰が米国でポスドク研究を行っていた2003年に、北京で生命科学の新たな研究機関・北京生命科学研究所が設立された。
 北京生命科学研究所(National Institute of Biological Sciences,Beijing)は、北京市人民政府が中心となり、国務院の科学技術部、国家衛生健康委員会、国家発展・改革委員会、中国科学院、中国医学科学院などが支援する研究機関で、北京大学や清華大学などがある北京市中関村に位置している。米国流のPI制度を導入し、世界一流の研究施設や研究装置を整え、従来の数量的な評価などにとらわれない研究環境で、世界トップクラスの研究成果を目指すものとして、新設された。

北京生命科学研究所の写真
北京生命科学研究所概観 百度HPより引用

 北京生命科学研究所の発足当初は、シャオドン・ワン(王暁東)米国テキサス大学教授と、鄧興旺(邓兴旺、Deng XW、1962年~)イエール大学教授が、米国の肩書きを残したまま共同所長となった。2010年からはシャオドン・ワンは、米国の職を投げ打って北京に移住し、単独で専任所長となった。

 邵峰は、この北京生命科学研究所の設立の報を聞いて、帰国を決意した。当時を振り返って邵峰は、シャオドン・ワン所長に魔法をかけられた状態であったと述べている。

 帰国するという邵峰に対し、多くの米国での友人は気が狂ったのではないかと言った。この時点で邵峰は、既にCell誌とScience誌に論文を発表しており、このままハーバード大学などで研究を続行すれば、いずれ米国の著名な大学から助教授などのポストがオファーされ、その後、教授に就任できる可能性が見えていたからである。

 2005年に33歳で帰国した邵峰は、北京生命科学研究所のPI(Primary Investigator、研究主宰者)として自らの研究室を構えた。

自然免疫の研究で成果

 邵峰が中国に帰国して取り組んだのが、細菌がどのように宿主に感染し、宿主の防御を破壊するかのメカニズムであった。

 邵峰は、まず病原性細菌の新しい毒性メカニズムを報告する論文をScience 誌に発表し、国際的な注目を集めた。
 続いて邵峰は、この毒性に対抗する自然免疫についての研究を進めた。2011年には細胞内の最初の受容体分子を発見し、2014 年には2 つの新しい受容体、内毒素と別の種類の細菌外毒素のセンサータンパク質を発見した。この発見は、ワクチンの開発に有効であると評価された。

 邵峰は2015年に、細胞の炎症性壊死を促進する受容体に係わるタンパク質を発見し、敗血症の臨床治療に新たな道を切り開いた。

 これらの成果により、邵峰は多くの栄誉と賞を獲得する。

 邵峰は、2015年に欧州分子生物学機構(EMBO)の外国人会員に選出された。また同年に、中国科学院の院士に選出された。この年の選出科学者では、43歳と最年少であった。 

 邵峰は2019年に、未来科学大賞の生命科学賞を受賞した。
 未来科学大賞は、香港を拠点とする未来科学賞財団が中国における優れた業績を表彰することを目的として2016年に創設した賞であり、生命科学、物質科学、数学・計算機科学の3分野である。

邵峰の未来科学大賞受賞写真

参考資料

・北京生命科学研究所HP http://www.nibs.ac.cn/
・中国科学院HP 【人民日报】走近中国最年轻的院士 https://www.cas.cn/cm/201601/t20160108_4515454.shtml
・淮安区報HP 邵峰:淮安的骄傲 淮中的自豪 http://www.haqbszb.cn/Article/index/aid/525528.html
・捜狐HP 他是当今中国最年轻院士,一位回归根本,简单纯粹的科学家——邵峰 https://www.sohu.com/a/262024/03/29
・京公网HP 他毕业于北京大学,43岁成我国最年轻的院士,如今获奖800万 https://baijiahao.baidu.com/s?id=1645745084753422385&wfr=spider&for=pc