はじめに
双一流建設政策 (正式名称「世界一流大学と一流学科の建設を統合的に推進する全体企画案:统筹推进世界一流大学和一流学科建设总体方案」)は、211工程や985工程など過去の成果を踏まえ、国際競争力を向上させ、世界一流大学と一流学科(双一流)の建設を推進する政策で、2017年にスタートした。
双一流建設政策の策定経緯
中国では大学重点化政策として、これまでに211工程(1995年)と985工程(1998年)が実施され、高等教育のレベルを高めてきた。しかし、対象大学の限定的である、特色や特徴が後退している、地域間の不均衡が存在するなどの課題が浮かび上がり、これらの課題に対応するため、新たな政策をとる必要が生じてきた 。
2014年5月、習近平総書記は北京大学で開催された座談会で、「共産党中央は世界一流大学の建設戦略を策定した。中国の特色ある世界一流大学を構築するべきである。外国のモデルや経験をそのまま真似すれば、優秀な一流大学を成功して建設することができない。中国には、ハーバード大学、スタンフォード大学、マサチューセッツ工科大学、オクスフォード大学、ケンブリッジ大学などといった世界トップレベルの大学がまだないが、北京大学、清華大学、浙江大学、復旦大学、南京大学など実力のある大学がある。先進的な大学の経験を参考にし、中国に定着して大学を建設すべきである」と指摘した。
2015年8月、習近平総書記をヘッドとする中国共産党中央の全面深化改革領導小组は、「世界一流大学と一流学科の建設を統合的に推進する全体企画案:统筹推进世界一流大学和一流学科建设总体方案」を了承し、同年10月国務院は同企画案を公布した。これにより、211工程や985工程など過去の成果を踏まえ、国際競争力を向上させ、世界一流大学と一流学科(双一流)の建設を推進する、双一流建設政策がスタートした。
双一流建設政策の具体的内容
ロードマップ
双一流建設に関しロードマップは次の通りである。
・2020年までに、若干の大学および学科が世界一流の仲間入りをし、若干の学科が世界トップクラスになる。
・2030年までに、さらに多くの大学および学科が世界一流に到達し、若干の大学は世界トップクラスになり、より多くの学科が世界トップクラスになり、高等教育レベルが大幅向上する。
・2050年までに、一流大学および一流学科の数は世界のトップクラスになり、高等教育の強国になる。
基本方針
上述の目標を実現するために、以下の四つの基本方針が決められている。
・世界一流を目標とする。:世界一流の大学の建設と世界一流の領域(学科)の形成を目標とし、優れた教育資源と研究資源を統合し、世界一流の人材の育成、研究成果の開発を目指している。
・研究領域の強化を手段とする。:各大学の研究領域を最適化させ、大学の状況に合わせた研究領域に重点をおいて発展させる。つまり、各大学の研究領域の重複を避け、それぞれの大学でユニークな研究領域を形成させる。
・評価システムを確立する。:モチベーションの向上と監督制度を設立し、目標管理を強化し、しっかりした評価システムを構築する。
・大学改革を原動力とする。:大学の発展を制限する古い制度を改革し、中国の特色のある現代大学制度、研究領域の発展に資する制度を樹立する。
2017年の指定
中国政府は、2017年に「人材育成」、「科学研究(基礎研究、応用研究、人文社会研究」、「社会への貢献(産学連携を含む)」、「中国文化の伝承」、「教員・研究者の質」、「国際交流」を評価し、42の「一流大学」と465の「一流学科」を指定した。学科のみの指定大学を加えた大学数は全体で140校であった。
2022年の評価
2022年2月、国務院の関係部署が連名で双一流建設政策の中間評価結果を公表した。
2017年に指定された140大学に加え、新たに山西大学、湘潭大学、南京医科大学、上海科技大学、華南農業大学、広州医科大学、南方科技大学の学科が指定された。
北京大学と清華大学に対する特別な優遇措置として、自ら指定学科を定めることができるようになった。
15大学については、評価の結果、警告が与えられ、警告を受けた学科については、2023年に再度評価されることとなった。
参考資料
・中央人民政府HP 『国务院关于印发统筹推进世界一流大学和一流学科建设总体方案的通知』
・SPCのHP 【22-013】第2ラウンドの"双一流"大学リストを発表 https://spc.jst.go.jp/experiences/beijing/bj22_013.html