はじめに

 浙江大学第二医院 (The Second Affiliated Hospital) は、1869年に英国聖公会により浙江省杭州に設置された歴史を有する医院であり、現在は浙江大学医学院の臨床医院となっている。

浙江大学第二医院の写真
浙江大学第二医院 同医院のHPより引用

1. 名称

○中国語表記:浙江大学医学院附属第二医院  浙大二院
○日本語表記:浙江大学医学院附属第二医院  
○英語表記:The Second Affiliated Hospital Zhejiang University School of Medicine  略称 SAHZU

2. 所管

 浙江大学第二医院は、浙江大学医学院に属し、同医学院の臨床医院である。

 浙江大学は、清末の1897年に開設された求是書院を源とし、古い歴史を有している。浙江大学第二医院は、浙江医科大学が1998年に旧浙江大学と合併して新生・浙江大学の医学院となった際、同医学院の臨床医院となった。

3. メインの所在地

 浙江大学第二医院の本院の建物は、浙江省杭州市上城区解放路88号にある。

4. 沿革

(1)起源はアヘン中毒治療施設

 浙江大学第二医院の起源は、英国聖公会が1869年に浙江省杭州に設置したアヘン中毒治療施設である。
 清朝末期の1851年に、洪秀全を天王とした太平天国の乱が勃発し、南京などの中国大陸中部は10年以上の戦乱に巻き込まれた。浙江省杭州も例外ではなく、1864年に乱が平定された後も街は荒れはて、人々は絶望感からアヘン中毒になる人も多かった。これを見かねた英国聖公会マードウ(Merdows、麦多斯)宣教師が、1869年にその治療施設を設置したのである。

浙江大学第二医院の母体となったアヘン中毒治療施設
浙江大学第二医院の母体となったアヘン中毒治療施設 同医院のHPより引用

 翌1870年には、治療範囲を広げ、他の病気も診る医院に拡大した。同医院は杭州大方伯医院と命名され、さらに翌1871年には杭州広済医院(广济医院、The Hospital of Universal Benevolence)と改名された。広済は、「広行済世」から取ったもので、行いを広くし世を救うの意味である。

 広済医院は1880年には、4つの病棟を有し、毎月200人の外来患者と20人の入院患者の治療に当たった。

(2)広済医校の設立

 1881年に、メイン(David Duncan Main、梅滕更)が、英国聖公会より広済医院の院長として派遣された。メイン医師は、1856年スコットランド生まれで、教会団体の援助を受けてエジンバラ大学医学部を卒業し、看護師の資格を持つ女性と結婚したばかりでの赴任であった。

浙江大学第二医院の発展に寄与したメイン医師
メイン(David Duncan Main) 浙江大学第二医院のHPより引用

 メイン広済医院・院長は本国に寄付を要請し、1884年に新しい敷地に病棟などの建物を設置した。そして、これらの施設を基に中国人医師の養成を目指して医学高等教育機関「広済医校」を設置し、メイン院長が同校の初代校長を兼務した。広済医院は、この公済医校の医学教育に協力するとともに、臨床医院としての役割を果たすことになった。

 広済医院では、当時中国で蔑視されていたハンセン病患者に治療の機会を与えるため、1889年と1892年に、男性用と女性用の別々の病棟を医院内に設置している。また、当時の中国で多発する病気であった結核の患者に対して、新鮮な空気を与えることによる治療を試験的に行っている。

 辛亥革命後、広済医校は広済医学専門学校となった。

(3)浙江大学附属第二医院

 1937年に日中戦争が勃発すると、広済医学専門学校は浙江省の辺地や大陸西部に移転したが、広済医院は英国系施設と見なされ接収を免れた。しかし、太平洋戦争の勃発とともに広済医院も日本軍に接収された。

 大戦後、広済医院は英国に返還されたが、国共内戦後中国共産党に接収され、1951年に設置された浙江省立医学院の臨床医院となった。

 1952年の大学・学部再編政策である院系調整により、浙江省立医学院と浙江大学医学部が合併し、浙江医学院が設置され、広済医院は同医学院の臨床医院となり、名称も浙江医学院第二附属医院(略称:浙医二院)と改名した。

 1998年に旧浙江大学が、浙江医科大学(1960年に浙江医学院から改名)、杭州大学、浙江農業大学と合併し、新たな浙江大学となったことにより、医科大学と同様に浙江大学に移り、医院の名称は「浙江大学医学院附属第二医院」となった。 

5. 分院の有無

 浙江大学第二医院のHPによれば、同医院は上城区解放路88号にある本院の他、次の分院がある。

○濱江院区:浙江省杭州市滨江区江虹路1511号
○城東院区:浙江省杭州市上城区源聚路300号
○博奥院区:浙江省杭州市萧山区启迪路456号
○眼科院区:浙江省杭州市上城区西湖大道1号
○浙大院区:浙江省杭州市西湖区余杭塘路866号浙江大学紫金港校区内

6. 規模など

(1)規模

 浙江大学第二医院のHPなどによれは、同医院の規模は次の通りである。
○病床数:濱江院区と合わせ約3,200床
○スタッフ:HPにデータがない
○その他のデータ:2020年の年間外来患者数は459.38万人、退院患者数は19.29万人、手術数は16.97万件とある。

(註)病床数を日本と比較すると、2021年7月時点で日本最大のベッド数を有するのは愛知県豊明市にある藤田医科大学病院の1,435床であり、東京では東京大学附属病院が1,226床を有し日本第3位である。
 東京大学付属病院の職員数を見ると、全体で4,273人(2023年4月現在、短時間有期雇用職員等を含む)となっている。
 東京大学付属病院の外来患者数は、2023年一年間で64.1万人、救急患者数1.2万人、手術件数は1.2万件、新入院患者数は2.7万人である。

(2)評価

 復旦大学の医院管理研究所による中国医院ランキング(2022年)での評価は次の通りである。ランキング全体は、こちらを参照されたい。
○総合順位:満点が100点のところ、36.324点で全国8位  1位は北京協和医院で95.301点   
○医療評価:満点が80点のところ、22.461点で全国9位  1位は北京協和医院で80点
○学術評価:満点が20点のところ、13.863点で全国7位  1位は四川大学華西医院で20点

参考資料

・浙江大学医学院附属第二医院HP https://www.z2hospital.com/
・浙江大学医学院HP http://www.cmm.zju.edu.cn/
・華典HP 梅滕更 David Duncan Main https://bdcconline.net/zh-hans/stories/mei-tenggeng
・東京大学付属病院HP https://www.h.u-tokyo.ac.jp/