Promotion of national innovation strategy

1. 構成

 第14次五か年計画では、第二編が「イノベーション駆動発展の堅持、発展の新たな優位性の全面的形成」とのタイトルで、科学技術の資源配分の統合・最適化、独創的で先進的な科学技術によるブレークスルーの強化、基礎研究の継続的な強化、主要科学技術イノベーション・プラットフォームの建設を実施する、と記述している。
 第二編は、次の4つの章で構成されている。
 ○第四章 国家戦略における科学技術力の強化
 ○第五章 企業の技術イノベーション能力の向上
 ○第六章 人材革新の活力の喚起
 ○第七章 科学技術イノベーション体制制度の整備

2. 科学技術力の強化(第二編、第四章)

(1)科学技術資源配置の整合・最適化

 イノベーション体系の最適な組み合わせを誘導・促進するため、量子情報、フォトニクス、マイクロナノエレクトロニクス、ネットワーク通信、人工知能(AI)、バイオメディカル、エネルギーシステム等の主要なイノベーション分野において、国家実験室の再編や国家科学センターの建設をする。

(2)独創的な科学技術の強化

 先進的な科学技術力によるブレークスルーの強化に関し、重要な先端科学技術分野として、次世代人工知能、量子情報、集積回路、脳科学と脳模倣型人工知能、遺伝子とバイオテクノロジー、臨床医学と健康、深宇宙・深地球・深海・極地探査の7つの領域を指定し、国家重大科学技術プロジェクトを実施する。

 また、新たな突発的な感染症やバイオセキュリティ上のリスクの予防・管理、医薬と医療機器、キーコンポーネント・部品・基礎材料、石油・天然ガスの探索と開発等の重要な技術に資源を集中させ、国の緊急事態及び長期的な需要への解決を図る。

(3)基礎研究の強化

 「基礎研究10年行動計画」を今後策定・実施するとともに、基礎科学研究センターを重点的に配置する。研究開発への経費投資に占める基礎研究への経費投資の割合を 8%以上に引き上げる。

(4)重大科学技術イノベーションプラットフォームの建設

 北京、上海、粤港澳大湾区(広東・香港・マカオグレーターベイエリア)における国際科学技術イノベーションセンターを整備する。

 北京懐柔、上海張江、大湾区、安徽合肥の4か所に、国家総合科学センター(综合性国家科学中心)を建設する。

 自然科学技術データベース、国家野外科学観測研究ステーション、科学ビッグデータセンターなどの国家重大科学技術インフラを建設する。

3. 企業のイノベーション能力の向上(第二編、第五章)

 第二編の第五章は、「企業のイノベーション能力の向上」である。ここでは、次の内容が述べられている。
 ○企業による研究開発投資拡大の奨励
 ○産業の基盤技術開発の支援

4. 人材のイノベーション活力の活性化(第二編、第六章)

 第二編の第六章は、「人材のイノベーション活力の活性化」である。ここでは、次の内容が述べられている。

(1)ハイレベルな人材の育成

 一流の戦略的科学技術人材、科学技術のリーダー的人材およびイノベーションチームを育成・養成する。また、基礎学科で傑出した学生の育成を強化し、数学・物理・化学・生物等の基礎学科基地および先端科学センターを建設する。さらに、報酬・福祉、子女教育、社会保障、税制優遇等の制度を整備し、海外科学者の中国での労働に対して国際競争力と魅力のある環境を提供する。

(2)人材制度の改革

 イノベーション能力、質、貢献等を考慮した人材評価体系を整備する。リーダーや傑出人材を選抜し、決定権および経費使用権を与える。科学研究者の職務における発明成果の権利享有制度を整備し、科学研究者の研究意欲を高める。中国科学院・工程院の院士制度を改革する。

(3)イノベーションと創業の支援

 企業家の財産権およびイノベーション収益を保護する。勤勉、研鑽、専心、失敗に対する寛容のイノベーション・創業文化を提唱し、試行錯誤・障害回復・修正する制度を整備する。科学精神を発揚し、科学普及活動を広く実施する。青少年の科学に対する関心を強化し、科学的資質を高める。

5. 科学技術イノベーション体制制度の整備(第二編、第七章)

 第二編の第七章は、「科学技術イノベーション体制制度の整備」である。ここでは、次の内容が述べられている。

(1)科学技術管理体制改革の深化

 科学技術管理機能の転換し、政策主導およびイノベーション環境の創出を強化する。科学研究投資体制を改革し、戦略的重要分野に重点的に投資し、部門の分割、小規模かつ分散の状態を変える。科学技術評価制度を整備する。

(2)知的財産権の保護運用体制の整備

 知的財産権保護制度を強化し、知的財産権関連の法律法規を整備し、新分野・新業態の知的財産権立法を加速する。知的財産権の権利侵害に対する懲罰的賠償制度を整備し、損害賠償を強化する。高価値の特許を保護し、特許集約型産業を育成する。

(3)科学技術開放協力の積極的な促進

 互恵的な国際協力戦略を実施し、世界のイノベーションネットワークに融合する。世界的な感染症対策、気候変動、健康等の分野で、各国の科学研究者との共同研究開発を強化する。国際的なビッグサイエンス計画・プロジェクトを主導する。