中国では、中国共産党の軍隊である人民解放軍もライフサイエンスに重要な役割を果たしている。そのほか地方政府や民間企業も重要である。

1. 人民解放軍と中央軍事委員会

 中国人民解放軍は、中国共産党が指導する中国の軍隊である。中央軍事委員会は人民解放軍を指導する共産党の機関で、メンバーは主席、副主席、委員の合計7名により構成される。現在の主席は、中国共産党総書記である習近平が兼務している。
 これらの関係組織を図示したのが下図である。

人民解放軍の組織


 人民解放軍は、陸軍・海軍・空軍・ロケット軍・戦略支援部隊の5軍からなる。
 これとは別に中央軍事委員会の直属機関として軍事科学院があり、軍の作戦能力を向上させるために1958年に北京に設置された。軍事科学、軍事戦略及び戦術の研究機関・シンクタンクで、初代院長は文革終了時に四人組逮捕を指揮した葉剣英元帥である。
 また中央軍事委員会に直属する後勤保障部がある。

 ライフサイエンス関係の機関として、人民解放軍の陸海空の3軍がそれぞれ軍医大学を所管している。また軍事科学院と後勤保障部は、軍事医学関係の研究機関、教育機関、病院を有している。

2. 地方政府

 中国の地方政府は、中央政府と協力しつつも独立してライフサイエンス研究の振興政策を実施している。とりわけ北京市、上海市、深圳市、あるいは広東省、江蘇省などの比較的豊かな市や省は、自らの地域の特性を生かして中央政府に匹敵するような研究開発や施設への投資を実施している。

北京生命科学研究所の写真
北京市が設立運営する北京生命科学研究所 百度HPより引用

3. 民間企業

 各国のライフサイエンスに関する民間企業として製薬メーカーが重要であり、メガファーマーと呼ばれる巨大製薬メーカーは非常に大きな売上高を誇るとともに、活発な研究開発活動を実施している。米国のファイザー、メルク、ジョンソン・エンド・ジョンソン、英国のグラクソ・スミスクライン、アストラゼネカ、フランスのサノフィ、スイスのノバルティス、ロシュなどが挙げられる。

 一方米国IQVIAレポートによれば、中国の医薬品市場の規模は2018年で米国の約5000億ドルに次いで世界第二位の約1300億ドルに達しており、日本の約900億ドルを凌駕している。この大きな市場を獲得するため、外国の医薬品メーカーや国内のメーカーが競っている状況にある。

 中国の代表的な国内メーカーとして、国薬集団(シノファーム)という巨大国有企業がある。2019年のフォーチュン500の194位で、米国のメガファーマーであるファイザー198位より上位になっている。しかし、この国薬集団を含め中国国内メーカーはそれほど高い研究開発能力を有しておらず、輸入医薬品や後発医薬品(ジェネリック)を中心に製造販売しているのが現状である。