はじめに
大気物理研究所(大气物理研究所、Institute of Atomospheric Physics)は、中央研究院気象研究所を前身とする中国科学院地球物理研究所から分離独立する形で、1966年に設置された。
地球システムモデル、気候変動と気象災害、大気環境変化とカーボンニュートラル、大気科学におけるビッグデータと人工知能の応用、惑星大気プロセス、極地大気の物理プロセスの研究、近宇宙大気環境などの研究を行っている。

1. 名称
○中国語表記:大气物理研究所 略称 大气所
○日本語表記:大気物理研究所
○英語表記:Institute of Atomospheric Physics 略称 IAP
2. 所在地
大気物理研究所の所在地は、北京市朝陽区北辰西路81号である。
3. 沿革
大気物理研究所の前身は、1928年に設置された中央研究院気象研究所である。新中国建国後、中国科学院はこの中央研究院気象研究所などを接収し、1950年に気象学、地磁気学、地震学などを総合的に研究する機関として地球物理研究所を設置した。
その後、気象学の重要性に鑑み、地球物理研究所から分離独立する形で、1966年に大気物理研究所が設置され、現在に至っている。
4. 組織の概要
(1)研究分野
大気物理研究所は、地球システムモデル、気候変動と気象災害、大気環境変化とカーボンニュートラル、大気科学におけるビッグデータと人工知能の応用、惑星大気プロセス、極地大気の物理プロセスの研究、近宇宙大気環境などの研究を行っている。
(2)主な研究組織
大気物理研究所の主な研究組織は以下のとおりである。
・大気科学・地球流体力学数値モデル国家重点実験室(大气科学和地球流体力学数值模拟国家重点实验室)
・大気境界層物理・大気化学国家重点実験室(大气边界层物理与大气化学国家重点实验室)
・中国科学院東アジア地域気候環境重点実験室(中国科学院东亚区域气候—环境重点实验室)
・中国科学院中層大気・地球環境観測重点実験室(中国科学院中层大气和全球环境探测重点实验室)
・中国科学院雲降水物理・暴風雨重点実験室(中国科学院云降水物理与强风暴重点实验室)
5. 研究所の規模
(1)職員数
2021年現在の職員総数は517名で、中国科学院の中で30位までのランキング外である(他の研究機関との比較の詳細はこちら参照)。
(2)予算
2021年予算額は5億0485万元で、中国科学院の中では30位までのランキング外である(他の研究機関との比較の詳細はこちら参照)。
(3)研究生
2021年現在の在所研究生総数は523名で、中国科学院の中では30位までのランキング外である(他の研究機関との比較の詳細はこちら参照)。
6. 研究開発力
(1)国家級実験室など
2つの国家重点実験室を有している(他の研究機関との比較の詳細はこちら参照)。
・大気科学・地球流体力学数値モデル国家重点実験室(大气科学和地球流体力学数值模拟国家重点实验室):1989年に設置された。地球流体(大気と海洋)のマクロ進化法則とメカニズムのシステム理論を研究している。
・大気境界層物理・大気化学国家重点実験室(大气边界层物理与大气化学国家重点实验室):1991年に設置された。大気境界層物理学、炭素と窒素の生物地球化学循環、大気化学と大気環境、大気化学と気候を研究している。
(2)大型研究開発施設
中国科学院は、同院や他の研究機関の研究者の利用に供するため大型の研究開発施設を有している(中国科学院内の設置状況詳細はこちら参照)。
大気物理研究所は、地球システム数値シミュレータ装置(地球系统数值模拟装置)を設置・運営している。同装置は、地球表面の各層をシミュレートし、様々な物理的、化学的、生物学的プロセスの詳細な情報を提供する機能を備えている。2022年から運用を開始している。

(3)NSFC面上項目獲得額
NSFC一般プログラム(面上項目、general program)の獲得資金額は、中国科学院の中では20位までのランキング外である(他の研究機関との比較の詳細はこちら参照)。
7. 研究成果
(1)Nature Index
Nature Index2022では、中国科学院内の20位までのランキング外である(他の研究機関との比較の詳細はこちら参照)。
(2)特許出願数
2021年の特許出願数は32件で、中国科学院内の20位までのランキング外である(他の研究機関との比較の詳細はこちら参照)。
(3)成果の移転収入
2021年研究成果移転収入は、中国科学院内の9位までのランキング外である(他の研究機関との比較の詳細はこちら参照)。
(4)両院院士数
2024年2月時点で所属する両院の院士は5名であり、中国科学院のランキング外である(他の研究機関との比較の詳細はこちら参照)。
〇中国科学院院士(5名):曾庆存、黄荣辉、吴国雄、吕达仁、石广玉
参考資料
・大気物理研究所HP https://iap.cas.cn/
・中国科学院HP https://www.cas.cn/
・中国科学院統計年鑑2022 中国科学院発展企画局編