ここでは、CRDSの俯瞰報告書を元データとして、ナノテクノロジー・材料分野における各国・地域の科学技術力比較を記す。なお、直近のCRDS俯瞰報告書(2023年)についてはこちらを、科学技術力比較の手法については、こちらを参照されたい。

1. ナノテクノロジー・材料分野における国際比較(2023年)

(1)国際比較の結果

全体     米国>欧州>日本~中国>韓国
    基礎     米国>欧州~日本>中国>韓国
    応用・開発  米国>欧州>日本~中国>韓国

(註)「~」は左の国・地域が右の国・地域と同等であるか若干強いと言うことであり、「>」は「>」の左の国・地域が右の国・地域と顕著な差があると言うことである。

(2)根拠となるデータ

 以下に示すのが、上記国際比較の元データであり、JST/CRDSの国際俯瞰報告から、筆者が独自の手法で作成したデータである。

○分野全体のデータ:下記の基礎のデータと応用・開発のデータを足し合わせ、分野全体のデータとした。

日本米国欧州中国韓国
275237181
276213635
400422
×00000

基礎のデータ:基礎フェーズでの国際比較表の◎、○、△、×の個数を数えた表である。 

日本米国欧州中国韓国
162520110
12491719
100110
×00000

○応用・開発のデータ:応用・開発フェーズでの国際比較表の◎、◎、△、×の個数を数えた表である。

日本米国欧州中国韓国
11271771
152121916
300312
×00000

2. ナノテクノロジー・材料分野における経年変化

 ここでは、ナノテクノロジー・材料分野の経年変化を示すため、それぞれの年のナノテクノロジー・材料分野全体の評価を数値化してグラフとしている。

(1)経年変化のグラフ

ナノテクノロジー・材料分野の経年変化

(2)根拠となるデータ

 各年度の俯瞰報告の国際比較表の◎、○、△、×の個数を数え、既に示した手法で数値化したデータである。

 2008年2009年2011年2013年2015年2017年2019年2021年2023年
日本1.001.000.990.920.890.920.890.860.83
米国0.980.951.001.001.001.001.001.001.00
欧州0.940.950.950.950.950.970.940.950.91
中国0.350.410.480.470.540.670.790.80.78
韓国0.570.570.650.610.60.560.590.590.57

3. CRDSによる国際比較の表

 下記に示した表は、CRDSの「研究開発の俯瞰報告書ナノテクノロジー・材料分野(2023年)」の97ページにある「図1.3.2–1国際比較表まとめ(第2章、29領域)」を元に作成した表である。

 上記1.および上記2.のデータの一部となっている。表の中で、中国の科学技術力の強い研究開発領域を赤色でマークし、逆に弱い部分を黄色でマークした。元データであるCRDSの俯瞰報告書では赤色や黄色でマークした部分はない。

(註1)CRDSの俯瞰報告書の表を元に上記の表が作成されているが、俯瞰報告書にあるトレンドは上記の表には記載されていない。これは、このコーナーでの国際競争力比較にトレンドを使用していないからである。

(註2)CRDSの俯瞰報告書では、7つの区分で別々の表となっているが、上記の表ではこれを統合させ、一つの表としている。

4. 中国のナノテクノロジー・材料分野の技術力の現状

 中国のナノテクノロジー・材料分野の国際比較の現状を、以下にまとめる。

○中国は、2010年代後半から急激にナノテクノロジー・材料分野の科学技術力を増大させ、現在は日本に徐々に追いつきつつある。今後は、世界トップの欧州、第二位の米国に追いつこうとする勢いがある。

○日本との関係で言えば、基礎研究は中国は日本より下位にあるが、応用研究・開発では中国は日本とほぼ互角である。

○中国が世界トップレベルにある研究開発領域(図で◎◎、赤でマーク)は次の4領域である。より詳しくは次ページの参考を参照されたい。
・環境・エネルギー応用~分離技術
・バイオ・医療応用~人工生体組織・機能性バイオ材料
・社会インフラ・モビリティ応用~磁石・磁性材料
・物質と機能の設計・制御~次世代元素戦略

○逆に中国が主要国から後れている研究開発領域(図で△△、黄色でマーク)は次の1領域である。
・共通基盤科学技術~微細加工・三次元集積