1.分野別の比較

 以下に、順次結果のみを列記していく。

(1)環境・エネルギー分野

全体   米国~欧州>日本>中国~韓国
基礎   米国~欧州>日本>韓国~中国
応用   米国~欧州>日本>中国~韓国
産業   欧州~米国>日本~中国>韓国

○全体

 日本米国欧州中国韓国
841381333216
137999778104
332026108102
×13103330

○基礎

 日本米国欧州中国韓国
335044
4829342438
102937
×10

○応用

 日本米国欧州中国韓国
31484710
4533332438
124336
×

○産業

 日本米国欧州中国韓国
20404216
4437301533
14103629
×101718

(2)ライフサイエンス・臨床医学分野

全体   米国>欧州>日本>中国~韓国
基礎   米国~欧州>日本>中国~韓国
応用   米国>欧州>日本~中国~韓国
産業   米国>欧州>日本~韓国~中国

○全体

 日本米国欧州中国韓国
621831422011
11051877884
65111410393
×4045

○基礎

 日本米国欧州中国韓国
34675910
3312203733
142331
×1215

○応用

 日本米国欧州中国韓国
156049
4719312331
164033
×1012

○産業

 日本米国欧州中国韓国
5634
3020361820
35104035
×1818

(3)ナノテクノロジー・材料分野

全体   米国~欧州~日本>韓国~中国
基礎   米国~日本~欧州>中国~韓国
応用   米国~欧州>日本>中国~韓国
産業   米国~欧州>日本>韓国~中国

○全体

 日本米国欧州中国韓国
6388761313
44.528364558
11.54839
×1915

○基礎

 日本米国欧州中国韓国
333532
1619
1717
×

○応用

 日本米国欧州中国韓国
193126
18121723
1411
×

○産業

 日本米国欧州中国韓国
112218
19.513151216
7.51711
×

(4)情報科学技術分野(旧電子情報通信分野)

全体   米国>欧州>日本>中国~韓国
基礎   米国>欧州>日本>中国~韓国
応用   米国>欧州>日本~中国~韓国
産業   米国>欧州~日本~中国~韓国

○全体

 日本米国欧州中国韓国
56.52171103021
152.54112410187
512285113
×3935

○基礎

 日本米国欧州中国韓国
22.5715410
50.517313133
173638
×11

○応用

 日本米国欧州中国韓国
16.5772910
58.511503728
152642
×1410

○産業

 日本米国欧州中国韓国
17.569271010
43.513433326
19102333
×1714

(5)システム科学技術分野

全体    米国~欧州>日本>中国~韓国
基礎    欧州~米国>日本>中国~韓国
応用    米国~欧州>日本~韓国~中国
産業    米国>欧州>日本~韓国~中国

○全体

 日本米国欧州中国韓国
2310582
9442624232
3511146672
×2624

○基礎

 日本米国欧州中国韓国
153941
3010112013
1724
×

○応用

 日本米国欧州中国韓国
3728
3715231712
102225
×

○産業

 日本米国欧州中国韓国
2913
271728
18102723
×1211

2.CRDSの2015年調査

 元データとなるCRDSの2015年国際比較の調査方法について、概略を述べる。

(1)俯瞰報告書と国際比較

 2015年の俯瞰報告書では、①環境・エネルギー分野、②ライフサイエンス・臨床医学分野、③ナノテクノロジー・材料分野、④情報科学技術分野、⑤システム科学技術分野の5分野ごとの研究開発状況を整理し可視化した報告書を作成している。

 この俯瞰報告書では、CRDSの関係者がそれぞれの分野の専門家との意見交換やワークショップを通じて研究開発現場で共有されている情報を確認し、主要国(原則として日本、米国、欧州、中国、韓国)を対象とした研究開発領域ごとの国際比較を掲載している。

(2)国際技術力比較の詳細

①研究開発領域ごとの比較
 技術力の比較は、基礎、応用、産業という3つの観点で行っている。
・基礎:基礎研究フェーズであり、大学・国研などでの基礎研究のレベル
・応用:応用研究・開発フェーズであり、研究・技術開発(プロトタイプの開発を含む)のレベル
・産業:産業化フェーズであり、量産技術・製品展開力のレベル

 これらに関する各国の技術力の「現状」を、◎:他国に比べて顕著な活動・成果が見えている、 ○:ある程度の活動・成果が見えている、 △:他国に比べて顕著な活動・成果が見えていない、 ×:特筆すべき活動・成果が見えていない、の4段階で行っている。

②国・地域
 国、地域のカテゴリーは、原則として、日本、米国、欧州、中国、韓国とし、その他の国、地域は必要に応じて追記している。

(3)全体の研究開発領域数

 2015年の俯瞰報告書の5つの分野における研究開発領域数は、下記に示すとおり全体で355に上っている。これらの詳しい研究開発領域名は、下記の参考に示すとおりである。これらの研究開発領域に関して、2年の期間をかけて総勢 500名を超える専門家の英知を結集してとりまとめている。

分野研究開発領域
環境・エネルギー92
ライフサイエンス・臨床医学77
ナノテクノロジー・材料41
情報科学技術91
システム科学技術54
合計355
(出典:CRDSの報告書及び掲載HP)

参考1 俯瞰報告書と掲載HP

・「研究開発の俯瞰報告書 本編 概要版 (2015年)」 国立研究開発法人科学技術振興機構 研究開発戦略センター 2015年4月

・掲載HP  http://www.jst.go.jp/crds/pdf/2015/FR/CRDS-FY2015-FR-01.pdf

参考2 各分野の研究開発領域名

 CRDSが2015年に実施した研究開発の俯瞰調査において、調査5分野で取り扱っている355の研究開発領域を以下に列記する。

1.環境・エネルギー分野(92 研究開発領域)

(1)エネルギー供給
高効率火力発電
高効率固体酸化物形燃料電池
二酸化炭素回収・貯留システム(CCS)
太陽光
風力
バイオマス(固体燃料、液体・気体燃料、生物設計)
地熱
海洋エネルギー(波力、潮流、海流、海洋温度差)
重質油の高度利用
低品位石炭資源の革新的な改質・輸送・転換技術とエネルギー・製鉄分野への利用
天然ガスの高度利用(超高効率発電・天然ガスからのコプロダクション(トリジェネレーション)・LNG 冷熱利用技術による高効率化)
非在来型石油・天然ガス資源の採掘技術
全負荷帯での超高効率発電によるCO2 排出量抑制
中温作動の固体電解質による新規プロセス
分散電源と再生可能エネルギーとの融合システム
エネルギーネットワーク技術
排熱利用低温吸熱反応(吸熱反応による排熱回収のための低温作動型触媒、低温排熱の高質化技術-エクセルギー再生)
産業分野における熱利用、未利用熱の効率的利用
新規石油化学製品製造ルート
輸送用燃料の低炭素化バイオマス利活用とバイオ燃料製造技術

(2)エネルギー利用
安全安心を支えるエネルギー利用
労働、雇用や生活スタイルとエネルギーサービス
健康、医療、介護、高齢者支援におけるエネルギーサービス
省エネ対策がもたらすコベネフィットの評価と見える化
エネルギー消費実態の把握
ネットワークとビッグデータの活用
需要側資源を活用したエネルギー需給マネジメントシステム
消費者行動に着目したエネルギー利用の高効率化
熱利用実態を踏まえた機器高効率化
建物躯体と建築設備の統合的高効率化
次世代交通・運輸システム
新しいエネルギー利用を社会に定着させる技術
次世代自動車の利用拡大と高効率化
未利用中低温排熱源の効率的活用
建築物における太陽エネルギー活用
水素エネルギーの利用浸透

(3)原子力
リスク評価と管理の手法
原子炉の設計・建設・維持
原子炉の保全学
原子力に関する防災
過酷事故への対応
原子力基盤技術の開発
新型炉(核融合含む)の研究・開発
核燃料サイクルの技術
高レベル放射性廃棄物の管理・処分
低レベル放射性廃棄物の管理
使用済み核燃料の管理
プルトニウムの管理手法
ウラン廃棄物の管理手法
原子炉の廃止措置(デコミ)
福島第一原子力発電所事故への対応
環境修復の手法
環境・人体への放射線影響(防護含む)
原子力に関するリスクと人間・社会
原子力に関する規制
3S(原子力安全、核セキュリティ、保障措置)
原子力に関する国際的視野
原子力の政治経済学
国際的視野、社会的視野を含んだ原子力に依存しないための戦略

(3)環境
建築と住環境(室内環境、建物の環境性能、建物周辺の環境)
都市・地域計画(コンパクトシティ、インフラ管理含む)
モビリティとその管理
安全な水の供給(水道と安全性確保)
水環境管理(下水道、浄化槽、湖沼、水辺創造など)
人間居住による環境負荷(GHG 排出、水、大気への排出、緑地の喪失)
都市環境と健康影響(大気、化学物質、緑地、熱環境等)
開発途上国の人間居住と適正技術
生物多様性の保全と持続的利用
陸域資源と生態系管理(含む陸水)
沿岸域および海洋の資源と生態系管理
流域レベルの生態系管理(森林から海まで)
生物多様性及び生態系サービスの評価
生態系サービスの管理システム・制度のための技術管理
製造業におけるグリーン技術(ゼロエミッション、環境配慮設計、クリーナープロダクション)
サプライチェーンの環境マネジメント
LCA に基づく生産と消費管理
廃棄物の発生抑制
リサイクル技術(都市鉱山含む)
水の循環利用技術
有害物質のマネジメント(PRTR、RoHS 含む)
元素の循環と利用(リン・窒素)
開発途上国による循環型技術(農村型小規模バイオガス化装置)
自然災害(地震、津波、台風、干ばつ、豪雨、豪雪、火山等)が地域環境へ及ぼすリスク
人為的災害(工場等での事故、危険物質運搬時の事故等)が環境へ及ぼすリスク
災害のリスク(人間への被害、環境への被害)の予防対策
災害発生直後の環境情報観測・把握手法とリスク軽減手法
災害廃棄物処理と利活用
自然環境の回復過程の促進
社会環境の再創造手法
地球規模の環境モニタリング(リモートセンシングと実測)
地域の環境と人間活動の把握(地域の環境計測、人間活動とその影響の把握)
環境情報基盤の整備と活用(ユビキタス情報、環境ビッグデータ、GIS)

2.ライフサイエンス・臨床医学分野 (77 研究開発領域)

(1)基礎生命科学
ゲノム
バイオインフォマティクス
エピゲノム
老化
免疫
代謝
発生・再生科学
脳科学
臓器連関
生物時計
バイオメカニクス
分子イメージング

(2)次世代基盤技術
in silico 創薬技術
構造生命科学
システムズバイオロジー(創薬)
トランスオミクス(統合オミクス解析)
新規バイオマーカー
マイクロバイオーム
創薬スクリーニング技術
メディシナルケミストリー
ドラッグ・リポジショニング
剤型技術(徐放化など)
ゲノム編集
モデル細胞
モデル動物
生体イメージング

(3)医薬品等
低分子医薬品
中分子医薬品
高分子医薬品(抗体医薬)
高分子医薬品(核酸医薬)
がん免疫治療
治療ワクチン
遺伝子治療
再生医療
レギュラトリーサイエンス(医薬品)

(4)医療・介護・福祉機器
診断機器
治療機器
介護・福祉機器
ウエアラブルデバイス
レギュラトリーサイエンス(医療機器)

(5)健康医療全般
疫学・コホート
循環器疾患
がん
免疫疾患
感染症
精神疾患
神経疾患
感覚器疾患
運動器疾患
小児疾患
希少疾患
医療情報
臓器シミュレーター
個別化医療
予防
医療経済評価、医療技術評価
健診・健康管理
医療保障制度

(6)グリーンバイオ
作物増産技術
持続型農業
高機能高付加価値作物
食料安全保障概念の変遷と政策対応の課題
バイオリファイナリー
化成品原料/バイオ化学品(再生可能化学品ならびにバイオプロセス製造品)
バイオ医薬品・食品原料
資源・レアメタル回収
生物多様性・生態系
生態適応
環境浄化

(7)ヒトと社会
ヒト由来試料
幹細胞・再生医科学に伴う倫理的、法的、社会的課題
脳・神経倫理
デュアルユース、バイオセキュリティ、生物化学兵器、バイオテロ対策、など
研究倫理
リテラシー・アウトリーチ
被験者保護
終末期医療・ケア

3 ナノテクノロジー・材料分野(41 研究開発領域)

(1)環境・エネルギー
太陽電池
人工光合成
燃料電池
熱電変換
蓄電デバイス
パワー半導体デバイス
グリーン触媒

(2)健康・医療
生体材料(バイオマテリアル)
再生医療用材料
ナノ薬物送達システム(ナノDDS)
ナノ計測・診断デバイス
ナノイメージング(バイオイメージング)
ナノイメージング(生体イメージング)

(3)社会インフラ
構造材料(金属系)
構造材料(複合材料)
水処理用分離膜
高温超伝導(応用)
センシングデバイス・システム
放射性物質除染、減容化

(4)情報通信・エレクトロニクス
超低消費電力ナノエレクトロニクス
二次元機能性原子薄膜
スピントロニクス
フォトニクス
有機エレクトロニクス
MEMS/NEMS
異種機能三次元集積チップ

(5)基盤科学技術
界面制御
空間・空隙構造制御
分子技術
バイオミメティクス
分子ロボティクス
元素戦略・希少元素代替技術
データ駆動型材料設計(マテリアルズ・インフォマティクス)
トップダウン型プロセス(LSI 超微細加工技術)
ボトムアップ型プロセス
ナノ計測(走査型プローブ顕微鏡)
ナノ計測(電子顕微鏡)
ナノ計測(放射光・X 線)
超高速時間分解分光
物質・材料シミュレーション
リスク評価・リスク管理・リスクコミュニケーションと社会受容

4 電子情報通信分野(91 研究開発領域)

Ⅰ.基盤

(1)基礎理論
情報理論
暗号理論
離散構造と組合せ論
計算複雑度理論
アルゴリズム理論
最適化理論
プログラム基礎理論
データアナリシス

(2)デバイス・ハードウエア
集積回路技術
MEMS デバイス技術
フォトニクス
プリンテッドエレクトロニクス技術
極低電力IT 基盤技術
量子コンピューティングデバイス
メモリーとストレージ
アクチュエーター
センサー
アナログ回路
情報処理
通信
エネルギーハーベストデバイス
電源

(3)通信とネットワーク
光通信技術
無線通信技術
ネットワーク・エネルギーマネジメント
ネットワーク仮想化技術
通信行動とQoE(Quality of Experience)
情報ネットワーク科学
新たな情報流通基盤

(4)ソフトウェア
ソフトウェア工学
組込みシステム
プログラミングモデルとランタイム
システムソフトウエアとミドルウエア

(5)IT アーキテクチャー
エンタープライズ・アーキテクチャー
ソフトウェア定義型アーキテクチャー
クラウドコンピューティング
モバイルコンピューティング
ワークロード特化型アーキテクチャー
ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)

(6)IT メディアとデータマネジメント
ビッグデータの統合・管理・分析技術
ユーザー生成コンテンツとソーシャルメディア
センサーデータ統合検索分析技術
時空間データマイニング技術
次世代情報検索・推薦技術
個人ライフログデータの記録・利活用技術

(7)人工知能
探索とゲーム
機械学習、深層学習
オントロジーとLOD
Web インテリジェンス
知能ロボティクス
統合的人工知能
汎用人工知能
認知科学

(8)ビジョン・言語処理
大規模言語処理に基づく情報分析
言語情報処理応用(機械翻訳)
言語情報処理応用(音声対話)
画像・映像の意味理解
言語と映像の統合理解

9)インタラクション
BMI(ブレイン・マシン・インターフェース)
人間拡張工学
ハプティクス
ウエアラブルコンピューティング
HRI(ヒューマン・ロボット・インタラクション)
グラフィックス・ファブリケーション

Ⅱ.戦略

(1)ビッグデータ
ビッグデータ基盤技術
ビッグデータ解析技術
クラウドソーシング
プライバシー保持マイニング技術
IT メディア分野におけるビッグデータ
ライフサイエンス分野におけるビッグデータ
教育とビッグデータ
社会インフラとビッグデータ(交通、ヘルス、防災など)
オープンデータ
著作権とビッグデータ
ビッグデータとプライバシー

(2)CPS/IoT
CPS/IoT アーキテクチャー
M2M
社会システムデザイ
CPS/IoT セキュリティー
応用と社会インパクト
ものづくりとIoT

(3)知のコンピューティング
知のメディア
知のプラットフォーム
知のコミュニティ

(4)セキュリティー
次世代暗号技術および暗号プロトコル
IT システムのためのリスクマネジメント技術
要素別セキュリティー技術
認証・ID 連携技術
サイバー攻撃の検知・防御次世代技術
プライバシー情報の保護と利活用
デジタル・フォレンジック

5 システム科学技術分野(54 研究開発領域)

(1)モデリング
先端的数理モデリング
先端的統計モデリング
行動のモデリングとソフトコンピューティング
エージェント・ベース・シミュレーション
データ設計
データ同化
モデルの正則化・最適化
機械学習・データマイニング
モデル統合に基づくシステム設計とその評価

(2)制御
学習制御/適応制御
ロバスト制御
最適制御/予測制御
分散協調制御
確率システム制御
ハイブリッドシステム制御
大規模ネットワーク制御
異常検出
環境エネルギーとシステム制御
都市インフラとシステム制御

(3)最適化
最適化コアモデルと関連諸技術
連続的最適化
離散的最適化
最適化計算
最適化モデリング
最適化ソフトウェアと応用

(3)ネットワーク論
複雑ネットワークおよび総論
機械学習・データマイニング分野におけるネットワーク構造解析
ネットワークに関する離散数学
ネットワーク解析用ソフトウェア

(4)複雑システム
複雑系生命科学
複雑系脳・神経科学
複雑系数学
複雑系物理学
複雑系数理モデル学
複雑系社会学
複雑系経済学

(5)サービスシステム
サービス価値創造基盤システム
サービスシステムモデル
価値共創過程のモデリング
サービスデザイン
価値共創の測定・評価
製品サービスシステム(Product-Service Systems)
地域・コミュニティサービスシステム
対人サービスシステム
IT サービスシステム

(6)システム構築方法論
合意形成
問題構造化技法
高信頼要求工学
システムアシュアランス
コンセプトエンジニアリング
System of Systems(SoS)アーキテクチャー
ライフサイクルマネジメント
プロジェクトマネジメント
品質マネジメント