「科学技術体制の改革の深化、国家創新体系の構築の加速に関する意見」(2012年)
科学技術体制の改革の深化等に関する意見(正式名称は「科学技術体制の改革の深化、国家創新体系の構築の加速に関する意見」)は、国家創新体系の建設を加速させるため公表されたものである。
科学技術体制の改革の深化等に関する意見の策定経緯
習近平が総書記に就任する直前の2012年9月、中国共産党中央と国務院は「科学技術体制の改革の深化、国家創新体系の構築の加速に関する意見:关于深化科技体制改革加快国家创新体系建设的意见」を公表し、胡錦濤政権の政策を引き継いで「国家中長期科学技術発展計画綱要(2006~2020年)」を実施し、科学技術体制改革を深化させ、科学技術の経済・社会発展に対する役割を十分に発揮させることにより、国家創新体系の建設を加速させることを宣言した。
この意見に従い、国務院の各部門は200件以上の政策文書を発表し、計画管理改革、院士制度改革、科学技術奨励制度改革などや、新時代における科学技術イノベーション政策の策定、科学技術イノベーション政策の実施と監督などの改革を進めた。
科学技術体制の改革の深化等に関する意見の狙い
この意見は、習近平政権が江沢民政権や胡錦濤政権における改革開放政策を引き継ぎ、科学技術の面ではより「創新=イノベーション」を強調した創新駆動型発展戦略を進めていく端緒となった。
企業の科学技術イノベーション能力の強化
この意見の狙いの一つは、企業の科学技術イノベーション能力の強化である。
江沢民政権や胡錦濤政権で、改革開放政策や国の機関の企業化などの抜本的な改革が進められてきた。しかし、中国の企業のイノベーション能力は他の先進諸国と比し依然として弱く、多くの分野で知的財産権を持つ核心的な技術が不足しており、企業はまだ研究開発費、科学研究組織、成果応用などの面で主体となっていない。
そこで科学技術と経済の結合をより強め、企業のイノベーションを制約している障害を打破しようとするものである。
科学技術イノベーションを社会的なニーズに対応
もう一つの狙いは、科学技術イノベーションを社会的なニーズに対応させようとするものである。前世紀末から今世紀初めにかけての急激な経済発展は中国を豊かにしたが、その一方で格差や環境汚染、食品の安全問題などが噴出してきた。そこで、国民の生活に関係する科学技術イノベーションを重視し、国民の健康、食品や薬品の安全性、防災・減災、生態環境と気候変動などにかかわる科学技術イノベーションを推進しようとするものである。
参考資料
・中央人民政府HP 『关于深化科技体制改革加快国家创新体系建设的意见』