はじめに

 ここでは、中国科学院の付属研究所の研究開発成果について、Nature Indexでの比較、特許出願数での比較、成果の移転収入での比較、両院院士数での比較を行っている。

 なお一般的に、研究開発成果の指標として重要視されるのは研究論文の発表数と引用数であるが、中国科学院本部は、中国科学院全体の研究論文数や引用数を公表しているものの、各付属研究所のそれは公表していない。付属研究所のHPを見ても、研究論文数や引用数を公表している場合とそうでない場合が混在している。
 そこで、ここでは研究論文数や引用数の指標は取り上げないこととした。ちなみに、トップ論文であればNature Indexの対象となるため、Nature Indexである程度代替できると考えている。

1. Nature Index

 科学雑誌のNatureは、自然科学系のトップランクの学術誌に掲載された論文を研究機関別にカウントしたNature Indexを公表している。現在取り扱われている学術誌は82誌であり、Nature及びその関連の専門誌だけではなく他の一流学術誌・科学雑誌であるCell、Scienceなどが含まれている。

 Nature Index2022は、2021年一年間で掲載された論文を、著者の所属研究機関別にカウントしたもので、その中から中国科学院付属の各研究所の順位を示したのが下表である。
 この表で論文数とあるのは、分数カウントと言って一つの論文を共著者が属する研究機関の数で除したものである。これを、研究所の重要度の尺度として用いることとした。

順位研究所名論文数
1大連化学物理研究所147.97
2物理研究所115.71
3福建物質構造研究所91.83
4高エネルギー物理研究所85.31
5長春応用化学研究所78.74
6生態環境研究センター78.7
7深圳先進技術研究院52.66
8合肥物質科学研究院50.05
9地質地球物理研究所48.36
10上海薬物研究所40.34
11上海珪酸塩研究所32.39
12半導体研究所30.7
13生物物理研究所28.9
14上海高等研究院25.16
15金属研究所23.04
16プロセス工学研究所22.1
17海洋研究所19.48
18微生物研究所17.69
19上海マイクロシステム・情報技術研究所17.33
20遺伝・発生生物学研究所15.7
Nature Indexでのランキング 
Nature IndexのHPのデータを元に林作成

2. 特許出願数

 中国科学院の本部は、研究成果によりできるだけ多くの特許を取得することを、各付属研究所に奨励している。

 2023年に発行された「中国科学院統計年鑑2022」を元に、特許(中国では「专利」と呼ぶ)の出願数での研究所ランキングを作成したのが下表である。これを、研究所の重要度の尺度として用いることとした。

順位研究所名件数
1深圳先進技術研究院1,936
2大連化学物理研究所1,404
3マイクロエレクトロニクス研究所814
4長春光学精密機械・物理研究所733
5合肥物質科学研究院638
6理化技術研究所605
7寧波材料技術・工学研究所601
8自動化研究所542
9プロセス工学研究所481
10金属研究所477
11瀋陽自動化研究所471
12宇宙情報イノベーション研究院448
13半導体研究所409
14蘭州化学物理研究所388
15化学研究所351
16上海マイクロシステム・情報技術研究所345
17西安光学精密機械研究所325
18工程熱物理研究所320
19上海珪酸塩研究所315
20上海光学精密機械研究所289
特許出願数のランキング 
「中国科学院統計年鑑2022」の情報を元に林作成

3. 成果の移転収入

 中国科学院の本部は、中国政府の要請を受けて、各研究所での研究成果により出来るだけ多くの収入を挙げることを奨励している。

 2023年に発行された「中国科学院統計年鑑2022」には、下記の通り、研究成果の移転により多くの収入を得た研究所のランキングが9位まで公表されている。これを、研究所の重要度の尺度として用いることとした。収入の単位は億元(約20億円)である。

順位研究所名収入
1大連化学物理研究所528.24
2プロセス工学研究所429.9
3金属研究所280.56
4瀋陽自動化研究所247.57
5化学研究所228.58
6自動化研究所194.05
7長春応用化学研究所183.6
8微生物研究所145.49
9寧波材料技術・工学研究所144.77
研究成果の移転収入  出典:「中国科学院統計年鑑2022」

(註)上記の表では、例えば大連化学物理研究所が約520億元(日本円換算で約1兆円)の売り上げとなっている。多い気もするが、この数字は研究所本体の売り上げではなく、関連会社の売り上げをカウントしたものであろう。

4. 両院院士数

 中国の研究者にとって、中国科学院の院士あるいは中国工程院の院士となることは、社会的にその研究成果が認められたことであり、院士となることが研究者の生涯をかけての夢となっている。

 ここでは、中国科学院の附属研究機関のHPにより、中国科学院と中国工程院(両院)の院士がどれほど存在するかを確認し、それを研究機関の成果指標の一つとする。

 下記にあるのが、2023年現在での中国科学院の研究所における、両院院士数のランキングである。院士の制度は歴史を重ねてきているので既に死亡した研究者もいるが、下記のランキングではこれら亡くなった研究者はカウントしていない。

 全体で20個程度をセレクトすることとしたところ、院士数7名以上の研究所が19か所に上った。

順位研究所名院士数
1地質・地球物理研究所18
2数学・システム科学研究院15
2物理研究所15
4大連化学物理研究所13
5理論物理研究所12
5化学研究所12
5生物物理研究所12
8分子細胞科学卓越イノベーションセンター11
9高エネルギー物理研究所10
9上海技術物理研究所10
11上海有機化学研究所9
12半導体研究所8
12合肥物質科学研究院8
12地理科学・資源研究所8
12分子植物科学卓越イノベーションセンター8
16力学研究所7
16国家天文台7
16上海光学精密機械研究所7
16金属研究所7
両院院士数のランキング 
中国科学院の付属研究所のHPの情報を元に林作成

参考資料  

・Nature Index HP  https://www.nature.com/nature-index/
・中国科学院HP https://www.cas.cn/
・中国科学院統計年鑑2022 人民出版社 2023年2月